第35話 海外展開支援
先週3日間、中小企業基盤整備機構の『海外展開支援研修』に参加してきました。この研修は、経済産業大臣から認定を受けた経営革新等支援機関を対象に、中小企業の海外展開を支援する実務を学ぶための研修です。
参加者は、私の様な会計専門家の他、弁護士さん、金融機関さん、中小企業診断士さんなど様々でした。3日間とも午前中に講義を受け、午後はグループワークをするといった形で、かなり実務的な訓練を積むことが出来ました。
これでいつでも海外展開を志向する企業様の支援ができそうです。とはいっても、私が全て一人で支援できるわけもなく・・・。
海外展開の相談を受けたら、情報収集、事業計画の策定、販路開拓、現地でのビジネス拡大、といった各ステージで、まずは何をしたらよいのか、情報源やパートナーをどうやって探したらよいのか、どんなリスクがあるのが、そのリスクへの対応策は?、といったようなことを整理してお伝えしながら、そのエリアに強い政府機関や専門家等を紹介する。といったような支援の形になります。
『日本再興戦略』では、今後5年間で1万社の海外展開を目指しているそうです。もちろん先に数字ありきではいけませんので、むやみな海外進出にはブレーキをかけながら、一方で、海外展開に潜む多大なリスクを認識してもらいながら、積極的かつ慎重に支援をしていきたいと思っています。
大事なことは、『日本の大事な技術、知財を安易に流出させないこと』、そして、『海外マーケットを取り込んで日本を豊かにしていくこと』だと思います。
中小企業と支援機関の技量が試されます。
第33話 勝負する市場(マーケット)の定義の仕方
「オジコ」というTシャツブランドをご存知でしょうか? 石川県のとある会社が運営するブランドですが、一風変わっています。 店舗を持たず、百貨店の催事場を渡り歩いて出店しているのです。
まあ、それだけでは驚かないのですが、このブランド、なんと客単価が9,000円とか! Tシャツ店としては驚きの数字ではないでしょうか?!
よく見てみると、そのデザインが非常に個性的なのです。 特に、親子ペアデザインのTシャツが種類豊富で、親子で着て横に並ぶと、電車などの絵柄がつながったりするのです。それもかわいらしいデザインで。 画像を見ていて、私もほしくなってしまいました。
ある時、そのブランドが島根の松江にある百貨店の催事に出店依頼されました。 その百貨店のお客様は年配者がほとんど。
そこで、オジコが狙った(市場:Field)は、「おじいちゃん、おばあちゃんが、孫に買ってあげたくなるような洋服」市場でした。
市場を明確化し、ターゲットをピンポイントに絞って催事に出店。見事に成功を収めたのでした。
市場を「Tシャツ」といった種類で考えず、お客様の目線や価値感で市場を特定し、ニーズに合わせてターゲットを絞っていく。 簡単なようで難しい戦略ですね。
第31話 「競合」の位置づけ
モスバーガーといえば、手作りの美味しいハンバーガーを提供してくれるお店のイメージが定着していると思います。 ハンバーガー市場のシェアは約14%で、マクドナルドの75%に次ぐ業界第2位。 そんなモスバーガーの社長さんの一言。
「マクドナルドさんを競合と思ったことは一度もない」 「むしろ競合は地元の寿司屋さんとかとんかつ屋さんと思っている」
この考え方は、私の『SHAFT経営』の根幹をなす考え方であるので、この映像を見たときとても嬉しくなりました。
私もモスバーガーが大好きです。 ちょっと値段が高いし、ちょっと待たされるけど、全く気になりません。 低価格や早い提供を期待していないからです。あくまで期待しているのは美味しいハンバーガー。
一度、モスバーガーさんも値下げをしたことがあるようです。十数年前、30周年記念で一定期間だけ300円を200円に。 そうしたら、顧客からおしかりを受けたそうです。 『モスはそんなことをしてはいけない!』と。
それからは一度も安易な値下げはしていないそうです。 「ハンバーガーの価値を下げたくない」と社長は力説します。
そして、顧客のニーズを直接感じるため、タウンミーティングを開催して顧客と社長が直接議論したり。
顧客にとっての価値の本質を追求し、ニーズに応えていく。 中小企業にこそ、学ぶところの多い会社です。
第30話 共感→尊敬→そして実践へ!
凄すぎるアートディレクターさんの特番を観ました。 企業のブランディングにおいて、いわゆるアーティスト・アートディレクターというと、私のイメージでは企業や商品のロゴやキャッチコピーなどを創って商品や企業の広告媒体にのせる、といったものでしたが、そんなイメージを全く吹き飛ばすアートディレクターの方がいらっしゃいました。
企業の大枠を俯瞰し、また細部まで理解しながらその企業が有する価値の本質を明確化させ、それを社会に伝えていく。 そんな、価値の本質を社会に伝えるという作業は簡単なようで非常に難しいんですね。 実際はほとんど伝わらない、もしくは企業サイドで消費者に伝わっていると思い込んでいるだけ、というケースが大半だとその方は言います。 そして、『伝わっていないのは、存在していないことと同じ』。非常に厳しい指摘ですが、まったくおっしゃる通りですね。
その方は、セブンプレミアムやホンダのNBox、ユニクロ、楽天、T-ポイントカードなど、多くのヒットデザインを手掛けた方なのですが、そのヒットを支えているのが卓越したコミュニケーション力。
ポイントは4つだそう。
1、相手の話をよく聞く
2、話の本意を理解する
3、自分の考えを正確にまとめる
4、自分の考えを的確に伝える
あたりまえじゃないか、と思ってしまいがちですが、これらは本当に重要、かつなかなか出来ないことなのです。 しかし、こういった基本的なことを徹底して、そして自らの理念に基づいた行動を実践していればこそ成功する、そんなことを教えられました。
この方のクライアントは口々に言っていました。 『先生は我が社のドクター、かかりつけ医』だと。
医者の仕事は2つ。診断と治療。 そのうち、診断が非常に重要であり難しい。 企業でいえば、売上が上がらない、イメージが悪い気がする、従業員の意欲がない、・・・・・。 その原因を追究し、問題をバシッと整理し、適切な処方をする。
アートディレクターさんなのに、従業員にヒアリングしたりしながら時間をかけて診断し、企業の進むべき方向性をイメージとして可視化し、経営者の悩みとそしてやりたいことを整理してあげる。
私も日頃から、『ブレない一貫した軸をもって経営するSHAFT経営』の考え方をベースに、クライアント経営者様のかかりつけ医的存在となることを目指して仕事をしていますので、非常に共感するとともに、日々スケールの大きなプロジェクトで実践していらっしゃるこの方に対する尊敬の念が非常に大きくなりました。
私も今一度気合を入れなおして、業務に邁進していきます!!
第29話 新たなニーズ掘り起こしによる商品軸差別化 ~その2
前回に引き続き、商品軸による差別化に成功した企業の事例。 こちらも経営難から躍進した革新的な中小企業です。
日本のメガネは約80%が福井県の鯖江市というところで製造されているそうです。 ピーク時には約900社くらいあった鯖江市のメガネ関連業者も今では半分近くに減少してしまっているのだとか。
そこに現れた救世主。 鯖江市のメガネ関連製造業者でもある中小企業の経営者が開発したとても薄くてファッショナブルな老眼鏡。 折りたたむと厚さは2mm。500円玉とほぼ同じ薄さだそうです。 持ち運びが便利なように、薄くすることを追求するとともに、デザインにも磨きをかけて今では大ヒット。
老眼鏡と言えば、今では100円均一でも買える時代ですが、なんとこの『ペーパーグラス』は約15,000円だそうです。 それでもヒットするということは、(市場:Field)で考えると、『持ち運びやすくおしゃれな老眼鏡』市場というニーズが潜在していたということで、そのニーズがこのメーカーによって掘り起こされ、一気に顕在化したのです。
価格競争に巻き込まれても、どこかで価値の本質を追求し、顧客ニーズに適合させていく姿勢、前回に引き続き見習っていきたいですね。
第28話 新たなニーズ掘り起こしによる商品軸差別化 ~その1
多くの企業が直面している価格競争から脱却し、ヒット商品を創造した企業の紹介です。 先日とあるテレビ番組で紹介されていた包装・パック材メーカー。 アイスやお菓子などの紙製の容器が主力商品なのですが、単価は一つ1円未満のものが多く、中国製品も参入してきて激しい価格競争に巻き込まれていました。
そこで社長の一案で、『WASARA』という非常にモダンなデザインでかつ質感も高級な紙製食器を開発。 色んな大きさ、種類があるのですが、標準の物で一つ100円と高価格設定です。
開発後、海外の展示会に出品したのですが、食品関連業者からの関心は集めるものの、高単価のためあまり引き合いがありませんでした。
ところが、粘り強くその価値を訴え続け、徐々にその高級紙製食器の潜在ニーズが顕在化。 高級パーティーで使われたり、ヨーロッパの持ち帰り高級海産物弁当の取り扱い業者から注文を受けたりするようになり、いまでは知名度もアップしているようです。
中国の工場で生産しているのですが、紙製食器の高級な素材感を出すのに紙に凹凸を入れたり、かなり開発に力を入れていたようです。 もともと(顧客:Target)を明確にしていたのかはわかりませんが、紙製食器業界としては新たな(市場:Field)を創造し、競合もいないいわゆるブルーオーシャンに近いエリアでのチャレンジで見事に成功。素晴らしいですね。
さてここで、(市場:Field)について突っ込んで考えてみましょう。 この会社の社長がインタビューで強調していたことが、『パーティーや日常の食卓を楽しい場にしたい!!』ということでした。 そういう意味では、(市場:Field)は『食卓を彩る、楽しくする食器』市場であり、競合は紙製だけでなく陶器など普通の食器も競合になりえると考えられます。 その中で、紙製でありながら質感や高級感に磨きをかけ、紙の手軽さ、使いやすさに高級感を融合させて差別化していったのです。 『楽しい食卓を創造する』という価値の本質を追求し、差別化に成功した素晴らしい事例だと思います。
自社製品が価格競争に巻き込まれていく環境を嘆く前に、こういったチャレンジングスピリットを見習いたいものですね。
第23話 おひとりさま市場が急増している?!
生涯未婚率: 男性 23%、女性 14%
今後も増えていくと予想されているそうです。
そして、単身世帯はなんと32%!!
驚きです。 私が小さいころは、多人数の大家族ばっかりだったのに・・・。
家電ブランドの《レコルト》さん。 一人用のジュースミキサー、オーブンレンジ、ホットプレートが大人気のようです。 そして、スーパーで売ってる鍋つゆ。これも一人用のポーションが売れているとか。
さらに驚いたのは、旅行企画の《トリッピース》さん。 おひとりさまツアーを企画し、各地のお祭りや名所などを初対面の参加者のみで回るのだそうです。 一人で参加してくる旅行者が急増しているみたいです。
また、単身OLさんが最近は会社から直帰することが多いため、『直帰女子』と言うらしいのですが、 こちらには、STAUBという一人調理用鉄鍋が流行っているのだとか。
(市場:Field)は、『単身者が手軽に調理できる調理器具』『一人で気軽に参加できる旅行』といったところでしょうか。 急増する市場でニーズを取り込んでいる会社さんたちのご紹介でした。
第22話 究極の人財が生み出す究極のサービス
~1泊5万円のおもてなし~
《加賀屋》さん。ご存知の方も多いと思います。北陸の有名旅館。 標準的な部屋で1泊5万円だそうです。 驚くことに稼働率約80%!! 全国平均の約48%と比べてみるとその凄さが分かります! 豪華な内装もさることながら、徹底した(密着軸)のおもてなしが驚きです。 浴衣のサイズは多種にわたり、仲居さんが客を部屋に案内する際、目測で身長を測り、全員にぴったりの浴衣を持ってくるのだそう。 私は182cmあるので、いつも浴衣がツンツルテン・・・。こんなサービスがあったらいちころでしょうね。 ほかにも至れり尽くせりのサービスで、金額を超える満足に大多数のお客さんが感動して帰っていくというのです。
そして、広大な館内を移動して料理を自動搬送するシステムを、4億円かけて投資したのだとか。 そして、それはもちろん業務効率のための投資ではありますが、当初の目的は、『料理の搬送があまりの重労働のために辞めていってしまう優秀な人財を流出させないため』だったとのこと。 いかに人財を大切にしているかが分かりますね。 さらに、旅館に併設して、保育園のみならず、学童保育所もあるんです。 仲居さんが業務終了後、夜10時くらいに子供を迎えに来て、寝ている子供を連れて帰ります。 これなら安心して業務に励むことができますね。
究極のおもてなし(強み:Strength)は、こうした優れた人財(人財:Human resource)を生み出す(資産:Assets)によって支えられているのですね。
いつか、何かの記念日に訪れてみたいですね。
第18話 購買点数のアップ策 その2
以前も記事に書きましたが、「売上を細分化して考えましょう!」 ということに関連して、今週の経験から。
売上=単価×数量
これをアレンジして、
売上=客数×客単価
このうち客単価=商品単価×来店頻度×購買点数 と細分化して考えます。
その中の購買点数の話。
今週、御殿場アウトレットに買い物に行き、デッキシューズを購入しました。 さくっと商品を決めて、店員さんに渡すと一言、「今年のカバーソックスは、ズレなくていいですよ」。 どうやら、カバーソックスとは、くるぶしの下くらいまでしかない靴下で、デッキシューズを履く際の便利モノのようです。
確かに・・・、芸能人のI田さんのように素足で履くのもなんだし・・・、と思い、説明を聞いてみると、 滑り止めのゴムが他社製品よりも相当すぐれている一押し品があるとのこと。 結局3足1,000円で購入。
さらに・・・、
店員さん、「汚れが取れやすいように、履かれる前に防水スプレーをして下さいね」と一言。
私「ホームセンターで売ってますか?」
店員さん「はい。洋服用のもので大丈夫です」
後でホームセンターに行ったときにでも購入しようかと思いながら、レジカウンターへ行くと・・・、 防水スプレーが陳列されていました{/face_ase2/}
結局防水スプレーも購入。
店員さんの術中にまんまとハマったショッピングでした(笑)
第17話 家電業界の勢力図の変化 いかに消費者目線で経営するのか
昨年、我が家では『ダイソン』の掃除機を購入しました。 値段が国産品に比べて高いので迷いましたが、買ってみて大満足! ものすごい吸引力で、しかもコードレス。掃除のストレスが激減しました{/face_warai/}
今では掃除機の売れ筋ベスト10のうち4機種が海外製です。 そのうち1位の韓国ブカンセムズ社の『レイコップ』。これは布団専用クリーナーでダニをたたき出して布団をきれいにするすぐれものだとか。
ダイソン社は最近、トイレなどに設置するハンドドライヤーにも参入。新製品を出しましたね。 こちらも凄いパワフルで、およそ14秒で完全に手が乾くのだそうです。 それを可能にしているのが小さくて強力なモーター。小さくすることによりフィルターも内蔵でき、きれいな空気で乾燥できるようです。 このモーター、開発に46億円投じているとか。
ダイソン社の成功の鍵は、昨日のシンプル化、高いデザイン性とともに、トップエンジニアである社長のダイソン氏がgoサインを出し、消費者のニーズに合った製品開発、販売にスピーディーに動くことかと思います。 かつてのソニーやアップルと似ていますね。
さて、外資系家電メーカーの勢いがこのように増しているのにはもっと大きなポイントがあります。 それは、消費者目線で「こんなものがあったら便利だな」という声を製品化しているというとことです。 ダイソンの羽のない扇風機は、「子供が羽でけがをするのを防ぎたい」、レイコップの布団クリーナーは、「家族をハウスダストから守りたいが共働きで布団を干す時間がない」といった主婦の声を吸い上げ、開発に生かされているのです。(市場:Field)と(顧客:Target)がマッチしていますね。
必要以上に薄いパネルや小さい部品の開発に目が向き、消費者の目線を忘れてしまっていないかどうか、日本企業も再確認すべきではないでしょうか。