第109話 一人一人のニーズに合わせる
前回紹介した西川産業さんの話の続きです。「革新の連続が伝統である」という言葉を紹介しましたが、それはまさに、「何を残して何を変えていくか」ということでもあります。すべてを変えてしまってはいけません。継続企業には、変えてはいけないもの、つまり「理念」が必要です。同社の経営理念は存じ上げませんが、社長の言葉の端々に出てくる「お客様に快適な眠りを提供し、健康をサポートしたい」といった思いが軸としてあるのだと思います。
その思いを表す行動の一つに、全国の寝具店改革があります。
旧来型の寝具店は、来店したお客様にふとんや枕を販売する、まさに「小売店」がほとんどでした。同社はそういった単なる「小売店」を脱却させ、「眠りの相談所」として、ただモノを売るだけではなく、良い眠りのためのアドバイスをしていくという付加価値を生み出しています。
全国民の3人に2人は眠りに不満を持っているというデータもありますので、潜在ニーズはたくさんあると思います。お客様のお持ちの布団の羽毛の状態を診断しリフォームしたり、「スリープマスター」というエキスパートが寝方の指導をしたり、一人一人の体形や要望にあった寝具をフィッティングしたり、その他にも様々な価値を提供していき、健康、眠りをテーマとしたコミュニティを創造しています。
売り手も買い手も社会も幸せになる「三方よし」を重んじる近江商人魂を感じますね。